2024/03/01 10:25

メテオスの山田です。

当店は隕石を原石から加工しているのですが、その過去の苦労話をします。

隕石の加工は鉄工業の会社さんでも、やりたくない仕事のようです。

以前、隕石の切断について金属加工をしている会社に隕石を切ってほしいと問い合わせをしまくったことがあります。その数、100社以上です。

残念ながら誰も隕石を切ってくれませんでした。試してもくれませんでした。その理由はどの会社も同じで、

「保証できないから」

「やった事ないから」

「機械が壊れるかもしれないから」

この3点でした。

非常に悔しい思いをした私は気持ちが吹っ切れて、自分でやる事を決意したのです。

保証ができないのが理由なら、全て自己責任でやる!

やった事ない事が出来ないなら、やった事ない事をやり続けよう!

機械が壊れるかもしれないなら、壊れてもいいように同じ機械をたくさん買おう!

この3つを心に刻み、どれだけ調べてもノウハウが出てこない隕石カットを0から始めました。

とは言っても、隕石は鉄なので誰でも切ることは可能です。ホームセンターに行けば鉄を切る道具が売っています。

ではなぜ、100社の加工会社が隕石を切ることに拒否反応を示したのか?

それは隕石が超高級な素材だからです。

例えば1gあたり1000円の隕石があるとします。その隕石は男性の拳くらいのゴロゴロした大きさで、重さが3kg(3000g)です。

値段は1000円×3000g=300万円です。

隕石の標本やアクセサリーはスライス品を使うことが多いので、その原石を3mmに薄くカットするのです。

ここで2つの大きな問題が発生します。1つは切断刃の厚みです。

金属加工会社で使っている刃やホームセンターで売っている金属用の刃の厚みは2mm程度です。

隕石を切ると、刃の厚み分の隕石が粉になってしまいます。

その刃を使うと、3mmのスライスを作るのに2mmも無駄になるということです。なんと歩留まり60%です。(40%が粉になるということ)

つまり、全て3mmスライスすると、3000gの隕石が1800gになってしまいます。

模様が綺麗な隕石が1200gも粉になってしまうのです。金額にすると、1000円×1200g=120万円分です。

目の前で120万円の隕石を粉々にしないと、スライス品が作れません。

そりゃ、隕石切断の仕事を断るわけです(笑)

2つ目の問題は隕石の固定です。

整形された木材を切る時には、そのままスゥーッと切ればいいのですが、普通何かボコボコしたものを切る時には固定する必要があります。

小さい物ならそんなに難しくはありませんが、何キロもする隕石の場合はそう簡単にはいきません。

もし固定できたとしても、1回切ってはまた固定して、また1回切っては固定してと、ものすごく大変で時間と労力がかかります。

スライスするだけで120万円もロスがあるのに、その作業で手間賃がプラスになると、もうコストがかかり過ぎて皆さんが買えるような値段で販売する事は不可能なのです。

私たちは、この2つの大問題を乗り越えてきました。今でも最善の策を模索し続けており、常に進化しています。

今では隕石を簡単に固定することができ、0.5mmの厚みで切ることが出来ています。




多少お金はかかりましたが、90%がアイデアです。

何事も出来ないで終わらせるのではなく、どうすれば出来るのか?という視点で物事を考えていくと、お仕事もプライベートも楽しくなるでしょう。

お金は使えば無くなるし奪われてしまうものですが、アイデアや知識は使いたい放題で、誰にも奪うことの出来ない最強の財産です。